華鬼×神無 +三翼

水華 SAMPLE

本分一部抜粋。

「ねぇ君一人?」
「可愛い……いや、あれ?」

 神無が一人で華鬼の帰りを待ちながら、作ってきた弁当を広げていると、そこに二人組みの男が話しかけてきた。ナンパをするつもりで話しかけてきた二人。けれども、振り返った神無を見て、不思議な表情を浮かべる

「おい、オマエが可愛いって言うから…」
「いや、でもよ」
 
すげぇ、なんか惹かれね?と口にして、再び神無を見る。顔は、どうしてもモノにしたいというほどのものではない。けれども、彼女のかもし出すなにかが、ものすごく男達を惹きつける。
 それは、鬼の花嫁であるが故の運命。刻印の力。その刻印を刻んだのが他ならぬ鬼頭なのだから、その効果は絶大なものになる。ただ、ふらりと街中をあるくだけで、男達が惹きつけられるのだから。

「あの…」
「一人でしょ?」
「違います」

 そこまで口にして、神無は華鬼に男達が近付いて来たら無視しろと言われたことを思い出して、未だ話しかけてくる男を無視し、弁当の準備をする。

「女同士で来てるの?」

 弁当を準備する神無を見て、都合のよい解釈をしたらしい男達は、一向に自分達の相手をしてくれない神無の腕を掴んだ。

「や……っ」
「ねぇ、友達も一緒に遊ぼうよ」
「華鬼……っ」







(一部抜粋2)

一際大きなイルカが、二人の前で着水。それと同時に、盛大な水飛沫が会場へと飛んだ。その音に咄嗟に神無を庇った華鬼は、飛んできた飛沫をもろに被る事になってしまった。

「……っ」

 思わずイルカを睨みつける。神無は慌てて鞄の中から、ミニタオルを取り出して、濡れた華鬼の顔を拭う。ポタリと髪から滴り落ちる水滴が神無の頬に落ちた。

「華鬼大丈夫?」
「平気だ」
「冷たい?」
「この天気だ。すぐに乾く」

 どうせなら後ろの方の席に座れば良かったと思いながら、神無の頬に落ちた水滴を拭う華鬼。それでも、神無が楽しそうにしているのなら、それでも構わないかと思う。適当に濡れた部分を拭き、後は自然乾燥に任せる事にした。
 その後もショーは続いていく。数匹のイルカの連続ジャンプから、希望の人をステージに呼びイルカに触って貰うなど。イルカに触れると聞いて神無が一瞬反応したが、流石に華鬼は前に出て行くなどご免だとばかりに顔を顰めた。彼女も大勢の前に出るのが嫌だったのか、希望する事は無かった。
 あの後は濡れることなく、無事にショーは終了し、プールを後にする。そのエリアの横にはラッコがおり、神無がお腹の上で器用に貝を割るその姿に見入っていた。

「神無、まだあと半分ある。行くぞ」
「うん」

 まだ見ていないエリアを見るために、再び順路へと戻る。神無に合わせてゆっくりと回っているからか、少しずつ人が減っていった。これで神無も周りを気にせずにいられるだろうと思いながら、小ぶりの魚が大量に泳いでいる水槽を見ている神無を見る。

「華鬼」
「どうした?」
「これ、アジ?」
「アジだな」

 そう言えば、今日の朝のおかずはアジの開きだったと思い出す。神無も同じ事を思っているのか、じっとその姿を見ていた。しばらくはアジは食卓に並ばないだろうと想像しつつ、次の水槽へと移動する。
 どうやら、最後の水槽らしいそれは、約180度周りを囲まれる大きさの水槽で、中にはさまざまな魚が群れを成し、あるいは自由に泳ぎ回っていた。上からその光が入るようになっているか、キラキラと輝くその姿は美しかった。数分間、いやもっと長い時間だろうか、その光景を見続ける神無を華鬼がそっと後ろから抱き締める。その華鬼の腕を掴みながら、神無は笑った。































Afterword

華鬼×神無デート話
子供は今回登場しません(汗)多少本来の設定から異なります
発行後、本編に載せ切れなかった部分(お○呂)をクイズ形式パスワードにて掲載予定
2009/07/18